大学2年生のときアルバイトとして入社しました。2011年くらいだと思います。
武蔵野美術大学に通っていたのですが、2歳上の先輩がカイカイキキで働いており、その方から誘われた形でアルバイトとして入社しました。
先輩と大学の喫煙所で話していたら、カイカイキキはいま仕事がたくさんあって稼げるからとりあえず来い、と言われました。当時、村上隆さんの存在は、教科書で見たことあるなくらいの感じで、その話を聞いたときは、「うす、行きます」と返事しましたが、あんまり現実感がありませんでした。
面接してみると、当時のカイカイキキは、森美術館で開催が決まっていた五百羅漢展に向けて制作が急ピッチで進められており、とにかく人が足りていない、時間もたくさん働けるから稼げる、と聞いて、当時はお金が稼ぎたかったので入社しました。
実はいったん面接で、落ちていまして。。。誘ってくれた先輩が再度面接を設定してくれて、なんとか受かったという感じでした。入社して最初に感じたのは、制作の規模の大きさです。とにかく、絵がでかい、規模が大きい制作をやっている、めちゃくちゃ忙しい、あちこちで怒声が聞こえる、という感じで面食らいました。
でもその状況を受け入れました。なぜなら、これはピラミッドだなと思ったからです。
僕は古代文明とか、ピラミッドが大好きなんです。ピラミッドって、謎が多くて、なんのために作られたか未だに諸説があり、それでも数千年近く経った今も存在している、世界中の誰もが知っている歴史的な建造物です。しかも、大勢の人がわっせわっせしながら、大きな目標に向かって、機械もない時代に、命を削りながら作って、達成していくわけじゃないですか。こう、最後の一つの石を乗っけて、完成したときとか、みんなでウオー!というか、そういう状況を想像するととてもわくわくするんです。カイカイキキはまさにピラミッドを作っているかのごとく、みんなでわっせわっせやりながら、大きな目標に向かっていく、しかもエジプト古王国の頃に比べれば環境は劇的に良いわけで、当然AIや機械や文明もあるし、給料もちゃんともらえて、屋根があるところで暮らせて、美術の歴史に残る制作に関われる、という状況は、ピラミッドが好きな僕にとっては最高の環境なのです。
主に村上隆作品の絵画制作の統括を担当しています。ペイント部という部署になるのですが、ピープルマネジメント、絵画制作の監督をやっています。例えるなら、大工の棟梁みたいな感じで、村上さんがもとになるアイディアを練り、絵画の設計図がデータ部という部署が制作して、ペイント部に引き渡してくれます。それ以降の絵画制作の部分を全部担当しています。絵の具などの資材調達から、施工方法、スケジュール、村上さんへのプレゼン、ブラッシュアップ、修正等々、すべてやります。
またピラミッドの話になりますが、4000年前は石を削るのにも、シンメトリーに設計するのにも、相当な技術が必要だったと想像していますが、ペイント部も現代の技術を相当工夫して、制作を行っていると自負しており、そういう歴史を作っていく部分を担当しているというところがやりがいに繋がっています。
ペイント部は24時間稼働、4交代のシフト制になっており、自分は夜シフトで業務を行っています。状況に応じて夜8時半か深夜12時に出社します。
まず、今日のやることのリストを箇条書きします。そして、現場に出社しているメンバーと、進捗状況、タスクの確認を実行します。
その後、制作物を村上さんに確認してもらうための手配を段取りします。
進捗状況をホワイトボードに書き出して管理しているのですが、それを最新の状況に更新します。
あとはひたすら制作するのみ。
朝の8時半、8時40分、日勤の社員が出社するまでに仕事の仕分け、引き継ぎして帰宅します。
とにかく目指している目標が大きいこと、制作の規模がでかいこと、そして常に切迫しているスケジュールのやりくりが本当に大変です。絵画の制作は、本当に多種多様なステークホルダーをまとめ上げなければいけないので、業者の方、社員、村上さん、アルバイトのメンバー、などなど、コミュニケーションをスムーズにしたり、皆が「これ知らなかった」とならないような情報の流通に気を使ったり、というところがとてもチャレンジングです。
やはり歴史に残る仕事に関われる、これにつきます。決して平坦な道のりではないですが、みんなでわっせわっせやりながら、高い目標を達成していくことが自分は好きです。
すごく難しいですね。。。。とにかくまずは芸術が好きな方をお待ちしています!客観的に見て、給料水準は業界的にも負けないと思いますし、この規模で絵画制作に関われて、しかもこの色がいいとか、技術について、世界基準の評価やフィードバックを貰える現場は世界で見ても稀有だと思います。ペイント部の仕事は、世界で高い価値が認められる作品を制作することが至上命題です。絵画のクオリティについて、フラットにその世界での市場価値で考えられる、絵画をプロダクト(商品)として考えれる、そういう人に来てほしいです。